大学院入試いわゆる「院試」について その2

 

 院試についてはまだまだ書きたいことがあったので2回に分けて書くことにしてみた.

院試の試験科目

 大学院の試験科目は研究科によって全く違う.基本的には,大学に入ってきて学んだ専門科目が出題範囲になる.複数の試験科目が用意されていて,その中から決められた数の科目を選び解答するというのが一般的だ.試験そのものは,その研究科の教授陣が作成しているため,試験を作成した教授の傾向が結構はっきりと出る.そのためその教授の講義をしっかりと聴いていたかどうかが結構重要になってくる.あ,この問題,〇〇教授の授業で出ていた問題だということが起こりうるのだ.

 院試の試験科目として忘れてはいけないものは「英語」である.研究するのに必要なのかと思うかも知れないが,ほとんどの大学院入試では英語の試験が実施されている.ただし,試験として英語を受けなければならないというものだけでも無い.最近では,TOEICなどで英語の能力を測る院試が一般的である.

院試の難易度

 大学にも頭が良くないと入れない名門大学があるように,大学院にも入学難易度というものが存在する.やっぱり,東大や京大の大学院へ進学するのは,地方国立大学の大学院へ進学するのよりも難しい.しかし院試は大学入試とは異なり,受験科目が多くない.大学入試では数学・現代文・古文・漢文・英語・地理・日本史・世界史,物理,化学,生物などといった多くの受験科目について勉強する必要があるが,院試では極端な話,その研究科が求める専門知識のみ勉強すれば良い.そのため苦手科目がなく全科目で点数を稼ぐ「バランス型」よりも,苦手科目もあるけどある特定の科目だけが大得意な「一点特化型」の人の方が院試では有利になる.

院試に落ちると…

 もし,大学院への進学希望者で,就職活動を全くやってこなかった学部4年生が,大学院院試に落ちてしまった場合は,一体どうなるのだろうか? これは残念ながら目も当てられないような状況になってしまう可能性がある.案外知られていない人生の落とし穴だと言えるだろう.院試に落ちてしまったときのデメリットを下にあげてみた.

大学よりもレベルの低い大学院に進学しなければならない.

 もし,第1志望の大学院に落ちてしまい,それでも大学院進学を望むのなら,どこか別の進学先を探さなければならなくなる.受験のタイミングによっては,めぼしい大学院の院試は既に終わっている可能性もあり,自分が望むようなレベルの大学院の院試を受けることができないかもしれない.必死に受験勉強して今の大学に入ったにもかかわらず,院試に落ちて大学院のレベルを下げることになると,進学しても研究のモチベーションを保つのに苦労するであろう.

卒業論文作成と院試の時期が重なる可能性がある.

 もし他の進学先を見つけることができても,受験時期が秋〜冬あたりの場合,卒業論文作成で忙しくなる時期と受験が重なる可能性がある.大学卒業に必要な卒業論文に集中したいが,院試に合格しないと進学先がない…というのはかなり精神的に辛い状況になる.

学部4年間過ごした大学から離れなければならない.

 別の大学院に合格し,なんとか進学先が決まったとしても,その大学が今の住居から通学圏内であるとは限らない.院試に落ちてしまうということは,大学卒業と同時に今の家から引越しなければならない可能性もあるということである.当然,大学4年間で培った人間関係も一度リセットされることになってしまう.

就職活動は間に合わない可能性が…

 大学院に落ちたら就職活動をすれば良いと思っている人も多いかもしれないが,就職活動は大学3年生から始まるのに対して,院試は大学4年生になってからしか始まらない.そのため,院試に落ちてから就職を始めているようでは,その時点で既に他の就活生に大分遅れをとっていることになる.ESを作成しながら院試勉強をするのは至難の技であるため,どちらも両立して行うということはまぁ不可能に近い.「就活がダメだったから大学院に進学する」ことはできても,「大学院に落ちたから就活を始める」のは基本的には難しいと思っておいた方がいい. 

院試で勉強しておくことの大切さ

 院試のことについていろいろ書いてみたが,私が思うに院試の難易度や受験する大学院のレベルなどとは関係なく,院試のための勉強はしっかりと頑張った方がいいということである.院試は受験勉強ができる生涯最後のチャンスだといえる.自分の研究テーマだけでなく,研究分野・学問の俯瞰的な視野を持つには,体系的な院試勉強が必要不可欠だと思う.これから博士号を取得しようと思った時,この時期に必死になって勉強したものは研究者として必ず大いに役に立つ.院試に通るための小手先だけの勉強にとどまらず,立派な研究者になるべく頑張って勉強してみてはどうだろう.