学振について その3 ー申請書の作成ー

 

学振申請書類に書くこと

 学振に提出するDC1とDC2の申請書は全11ページある.このうち最初の2ページは,「1.申請者情報等」について記載するページである.3〜9ページは,「博士課程で実施する研究」について記述する箇所であり,「2.現在までの研究状況」「3.これからの研究計画」「4.研究業績」「5.自己評価」の4つの項目に分かれている.申請書の中で最も時間をかけて作成しなければならないところであり,それぞれかなり念密に作りこむ必要がある.申請書10〜11ページは,指導教官から申請者への「評価書」になる.

 以下にそれぞれの項目で具体的に何を書くのかについてまとめてみた.

1.申請者情報等

申請者の審査領域,研究課題,氏名,国籍,生年月日,学歴,研究歴,現在の研究指導者(所属研究室の教授や准教授)などを書く.もしも,博士課程から別の研究室に移る場合は,受け入れ先の研究指導者についても記載しなければならない.そのため,申請書を作成する前に,受け入れ先の研究指導者に博士課程進学の意思と計画についてしっかりと伝えておく必要がある.

2.現在までの研究状況

 「2.現在までの研究状況」は,研究室に配属されてから現在に至るまでどのような研究を行ってきたかについて記述する.A4サイズ1ページ半ぐらいのスペースに,①研究背景,問題点,解決方策,研究目的,研究方法,特色と独創的な点についてと,②研究経過と結果についてを全て記載しなければならない.書きたいことを長々と記述することはできないため,必要なポイントを絞ってわかりやすく記述する必要がある.必要なら図表を入れても良い.もし,学部から修士課程へ進学する過程で研究室を変更した場合は,学部生時代の研究成果を記述することもできる.もし既にアピールできる研究業績(論文や学会発表)がある場合は,「確かにこの申請者が行った研究なのだな」ということを示すために,そに旨を謙虚かつ目立つように記載しておくと良い.

3.これからの研究計画

 「3.これからの研究計画」では,(1)研究背景,(2)研究目的・内容,(3)研究の特色・独創的な点,(4)年次計画,(5)人権保護,法令遵守への対応について記述するところである.勘違いしてはいけないのがここでの(1)〜(3)は,「2.現在までの研究状況」で記述した内容とは違うということだ.2.で記述するのはこれまで行った研究の研究背景・目的・内容・特色等であって,3.で記述するのはこれから行う研究の研究背景・目的・内容・特色等である.「結果ゼロの状態からこのような研究をするつもりです」ということを書いてもいいのだけれども,できれば「既にこのような予備的な成果がでていてこの研究はうまくいきそうですよ」ということをアピールしておいた方がいい.(4)では(2)で示した研究内容をどのような期間で実施するかを記載する.どれだけの期間でどのような目標を達成するつもりなのかを具体的かつ明確に書かなければならない.(5)は個人情報を伴うアンケート調査,国内外の文化遺産調査,ヒト遺伝子の研究や動物実験など,研究を遂行する上で人権保護や法令遵守の観点から対応が求められる場合のみ,どのように対応するつもりなのかを記載すれば良い.これらと関係ない研究の場合は「本研究では該当しない」とだけ記載しておけばいい.

4.研究業績

 「4.研究業績」には(1)論文,(2)総説,(3)国際学会の発表,(4)国内学会の発表,(5)特許,(6)その他を記載する.自分の名前が記載されている論文・総説・学会発表・特許に関しては,申請者の名前がセカンドでもサードでも記載することができる.論文・総説は,査読中のものに関しては記載することができず,アクセプトされたものでないといけない.学会発表は,申請者が発表してい学会であっても申し込んだ発表に申請者の名前が記載されていれば書いていい.国内発表よりも国際発表の方が,ポスター発表よりも口頭発表の方が高く評価される(と思う).その他の業績欄には受賞歴や飛び級,留学研究歴などを記載する.受賞歴は研究に関してだけではなく,学部成績優秀者のような学業に関する賞などでもいい.

5.自己評価

 「5.自己評価」は,自分の研究者としての資質をアピールするところである.①研究者を志望する動機や,目指す研究者像,自己の長所などについてと,②受賞歴,飛び級,留学などについて記載する.①の記述はそんなに難しくないかもしれないが,②については何も記載することがない人もいるかもしれない.できることなら申請時までに何かアピールできることを作っておくといい.

評価書

 この項目については指導教官が本来作成してくれる箇所であるが,指導教官によっては「書くのめんどくさいからとりあえずたたき台を作ってきて」みたいなことを言われたりもする.自分の評価書を自分で書くのはおかしいような気もするが,確かに指導教官も申請者のことをよくわかっていないこともあるだろうから仕方ないのだろう.