アカハラについて

 

アカハラとは?

 世の中には様々なハラスメントがある.パワハラ,セクハラ,ドクハラモラハラ...これらは上司とその部下のように「強者とそれに対して逆らえない弱者」という関係性から成り立っている.この関係性は,いまだ師弟関係が根強く残るアカデミックの世界にもあてはまる.研究室という狭くて小さな組織において,絶対的な権力を有する強者のスタッフ陣と,それに逆らうことができないポスドク・学生といった弱者の関係は,まさにハラスメントが起きうる環境なのだ.このようなアカデミック界におけるハラスメントのことを「アカハラ」と呼ぶ.

アカハラの例

 では具体的なアカハラとはどんなものがあるのだろうか? 代表的なアカハラ事例を3つに大別して見た.いずれもアカハラが横行する研究室でよく見られる事象である.

1.教育の放棄・研究の侵害

 研究室のスタッフ陣は,学生に教育的な指導を行う義務がある.また,学生にも良好な環境下での研究を遂行する権利がある.そのため「正当な理由なく研究の教育指導を行わない」「研究機器を使わせないなど研究の遂行を妨害する」「研究について人と相談することを禁止する」「研究データの改ざんを強要する」といった行為は,アカハラに該当する.

2.不当な評価や処遇

 スタッフ陣の昇格・昇給や,学生の単位・学位の認定は,本人の研究成果に基づき適切に行われなければならない.そのため「本人の望まない異動の強要」「正当な理由なく推薦状を書かない」「正当な理由なく単位を認定せず留年させる」「就職活動を禁止する」などといった行為はアカハラに該当する.これらは,スタッフや学生の社会的環境に大きな影響を与えるアカハラ行為である.

3.身体的または精神的な苦痛

 身体的な苦痛(暴力行為等)は論外として,アカハラで一番多いパターンが加害者による精神的な苦痛ではないだろうか.「些細なミスに対する大声での叱責」「人前・部下の前での叱責」「侮蔑的発言」「プライベートなことをしつこく聞く」「故意に人の人格・地位を貶める」などがこのタイプのアカハラに該当する.3つの中では最も,加害者側がアカハラだと認識していないタイプのアカハラだと思う.

アカハラで苦労しないために

 このようなアカハラ被害を避けるにはどうしたらいいの考えてみた.もし今現在アカハラで苦しんでいる人がいるのなら,何かの参考になれば嬉しい.

1番大切なこと

 まず1番大切なのは当然のことだが「アカハラ行為をする人がいる研究室に行くのを避ける」ことである.どんなに自分にとって魅力的な研究をしていようが関係ない.アカハラが蔓延しているような研究室では,まともな研究なんてできっこないのだから.好きな研究を好きなようにやらせてもらえなくなってしまう可能性さえある.そんな研究室に行くのは最初から絶対に避けるべきである.

2番目に大切なこと

 しかし,それでもアカハラ研究室に進んでしまう学生は少なくない.「入ってみるまで気づけなかった」「入るまでは大丈夫だと思っていた」というのもよくあるパターンである.もしそんな研究室に配属されてしまった場合は,どうすればいいのだろうか.まず考えなければならないことは「その研究室で卒業までアカハラに耐えれそうか」ということである.もしそのアカハラの環境下で,なんとか耐えれそうであるということであれば,卒業まで耐えた方がいい.動くことのない卒業という明確なゴールがある分,乗り切ろうというモチベーションも保つことができるだろう.卒業さえしてしまえば,今後の人生でアカハラ加害者と会うことなんてそうそうない.長い人生の内のほんの数年耐えればいいと前向きに考えるのだ.仲間内で愚痴を言い合って悩みを抱え込まないようにするといい.

3番目に大切なこと

 「どうしてもアカハラに耐えれそうにない」もしくは「アカハラに耐えたところで学位を取得できそうにない」ときに起こさなければならない行動は「逃げること」である.アカハラに耐えたところで卒業できなかったり,学位が取得できないのならば,その研究室に残る意味がない.アカハラ被害者と争うのは時間の無駄である.信頼できる同研究科の他の教授に相談して,なんとか研究室を移れないか画策しよう.おそらく他の教授も,アカハラ研究室の学生には同情的だろう.修士や博士に進学するのを契機に,うまく他の大学に進学するのも一つの手である.

最後に考えること

 研究室から逃げ出す方が大切だが「アカハラの訴えを起こす」のであれば,大学のアカハラ相談室や,学部・研究科のアカハラ担当の教授に相談することもできる.どちらに相談するのが良いかは,対応してくれる人たちの人間性によって変わってくる.アカハラ相談室の人は,訴えてきた学生をなだめるだけで終わってしまうなんてこともある.一方のアカハラ担当教授の先生は,あまり被害者の話を聞いてくれなかったり,直接アカハラ教授のところに「おたくの学生が訴えてきたけど」みたいに喋ってしまう人もいる.より問題解決に向いてそうな方を見極めて相談しにいった方がいい.

訴える際に大切なこと

 アカハラの相談をする際に大切なのは,加害者を陥れようとする意図を極力持たないようにすることである.加害者が明確な犯罪行為(研究費の不正使用,暴力行為,飲酒運転など)をしていない限り,大学の教職員をクビにするようなことはほとんどしない.アカハラの教育的指導の線引きも難しかったりする.訴えるのが社会に出たことのない学生ということもあり,学生の一方的な発言を鵜呑みにしてくれるようなことはない.どのようなアカハラをそれくらい受けているのか,客観的な事実を伝えるように気をつけなければならない.

僕の研究室の場合

 僕が所属している研究の教授も大学で結構有名なアカハラ教授だった.研究内容よりも,アカハラの内容で有名になってるような教授だった.僕は「なんとか卒業まで耐える」という選択肢を選んだが,卒業後に大学に訴えたりする学生もいた.学位取得を不安に思い,海外の研究室に移った学生もいた.何れにせよ,自分がアカハラ被害に対してどのような判断を下さなくてはいけないのか,よく考え実行に移ることが大切なのだろうと思う.