学歴ロンダについて

 

学歴ロンダとは

 学歴ロンダとは学歴ロンダリングの略称であり,ロンダリングとは「洗濯する」という意味である.つまり学歴ロンダとは「今いる大学よりもレベルの高い大学院へ進学する,以前の学歴を洗浄する」行為のことを指す.一般的には,大学入試よりも大学院入試の方が,難易度が低いことが多い.そのため,大学入試では偏差値が足らずに受からないような有名大学であっても,大学院では拍子抜けするほど簡単に入学できたりする.以前の記事でも書いたが院試は,専門知識が問われる問題が多く,研究者としての資質を見極められる試験であるため,幅広い科目を勉強しなければならない大学受験とは異なる.自分の好きな学問分野の知識なら誰にも負けない...みたいな人が受かりやすい.研究者気質というかオタク気質のような人たちは,自分の得意分野に関しては何の苦もなく必死に勉強するために,いい加減に大学4年間の講義を受けてきた内部生よりも知識が豊富だったりする. 

なぜ大学院の入試難易度は低いのか

 大学入試で必死に勉強して合格した人もいるのに,大学院からひょっこり進学するなんてちょっとずるいと思う人もいるかもしれない.しかし,大学院とは勉強ができる人のために人材を囲い込む場所ではなく,あらゆる学びたいという向学心が高い人に開かれているべき場所である.大学側としても,異なる考え方を持った人どうしが集まることで,互いに切磋琢磨し優れた研究成果を生み出すと期待しているのだろう.あと,外部生と内部生を院試で競わせる事で,内部生に今一度院試勉強をしっかりとさせようとしているのかもしれない.

学歴ロンダのメリット

 学歴ロンダによるメリットは,大きく分けて2つある.1つは,やはり「レベルの高い研究環境で学ぶことができるようになる」ということだろう.有名大学の研究科にもなれば,世界的に有名な教授が多いだろうし,業績を残しやすい研究テーマを与えてもらえる可能性も高い.海外の有名学会に参加したり,留学できる機会もあるだろう.研究資金も豊富にあるため最新機器が揃った研究環境だろうし,学生のモチベーションとレベルも高いので自身の刺激にもなる.

 もう1つのメリットは「就職が有利になる」ということである.最終学歴は,学歴ロンダ後の大学になるために,学歴ロンダ前の大学では入ることができないような有名企業でも,教授のコネなどを使って入社できたりする.大学院の名前が違うだけで就職のしやすさが全然違うのである.特に企業の研究職などは,大学名で判断される傾向がかなり強い.

学歴ロンダの注意点

 基本的には,学歴ロンダをする学生は,今いる大学よりももっとレベルの高い研究をしたいと考えているために,研究に対するモチベーションが高いことが多い.しかし,そうはいっても当然内部生も優秀な人は多い.なんせ大学受験でその偏差値が高い大学に受かることができる学力を持った人達だ.外部生の中には内部生のレベルの高さについていけず,途中で学校に来なくなってしまう人も少なくない.出身大学で差別待遇を受けるなんてことは聞いたことがないが,やっぱり優秀な人たちに囲まれて感じる疎外感というものもあるだろう.同学年の学生は当然内部から進学してきた人が多いわけだから,すでに仲間関係が構築されており,その輪に入っていくこともなかなか難しい.悩みを相談できるような同学年の仲間を見つけることに苦労しがちなのである.

 これまで多くの学歴ロンダをしてきた学生を見てきたが,「研究に対するモチベーションは,内部生の誰にも負けない!」ぐらいの気持ちで研究に邁進していくという気概が何よりも必要な要素なのではないかと思う.