大学の研究室について

 

研究室とは?

 大学や大学院の研究活動は,「研究室」と呼ばれるグループを1つの単位として行われている.大学院には複数の「研究科」と呼ばれる組織が存在しているが,研究室とはこの研究科に所属して研究を行うグループのことである.研究科は,大学で言うところの学部のようなものであり,「工学研究科」や「薬学研究科」のように,学部の名前がついた研究科が多い.規模の大きい研究科の場合はさらに複数の「専攻」に分かれていることもあり,研究分野はとても細かく細分化されている.

 大抵の大学では,学部4年生になると所属学部の進学先の研究室に配属される.学部4年生で卒業する場合は1年間,大学院修士課程まで進む場合はさらに2年間,博士学位と取得を目指す場合はもう3年間,研究室に在籍することになる.博士を取得しようとすると実に計6年間も研究室に所属することになるのだ. 

研究室の構成メンバー

 研究室は主に3種類のメンバーによって構成されている.1つ目が「教授」「准教授」「講師」「助教」と呼ばれるスタッフ陣である.研究室の研究方針や,研究費の使用方法などを決め,学生への教育・指導が主な仕事になる.中でも教授は,研究室のリーダーかつ最高責任者であり,各研究室に基本的に1人しかいない.2つ目が,「ポスドク」である.ポスドクは博士学位を持った研究者のことであり,研究を推進してくれる重要な人材である.スタッフ陣とは違い,研究室から雇われている身であるため,運営に口を挟むことはない.3つ目が,大学院生を中心とした「学生」である.人数は,この3種類のメンバーの中で最も多い.研究を始めてからまだ数年しか経っていないため,スタッフ陣やポスドクの指導のもと研究の仕方を学んでいく.

 その他にも,教授をはじめとするスタッフ陣の秘書や,実験を行う研究室であれば技術補佐員などといったメンバーが所属している.

研究室の活動

 研究室にとって最も重要な活動は「論文作成」である.研究室で行なった研究の成果は,論文としてまとめ上げられ,国内外の専門誌に投稿される.専門分野によって異なるものの,論文は英語での作成が基本になる.一部の国内誌は日本語での執筆が可能であるが,日本語で書かれた論文は日本人しか読まない.そのため,世界中の人々に読んでもらいたいような重大な研究成果は,ことごとく英語で執筆され,国際的にも有名な専門誌で発表される.この論文数が研究室の業績・生産性そのものだといっても過言ではない.対外的にも論文数が,その研究室を評価する指標の一つになる.分野によっては論文の代わりに「特許」が業績になる場合もある.ただし,アカデミアは企業と違いあまり利益を追求することをしないので,どちらかといえば例外的である.

 研究者同士が直接会って研究について議論し合う「学会」への参加も研究室の大切な活動の一つである.論文を作成しているだけでは,生の研究者と直に会って研究の話をすることはなかなかできない.同じ研究室のメンバー同士で話すことはあるかもしれないが,どうも同じ研究室の人間同士の思考は似通ってくるので,斬新なアイデアは生まれにくい.研究において他者との議論で得られるひらめきやアイデアは,とても重要なものだ.学会で発表するということは,同じ研究領域の研究者からの意見を得られるだけでなく,研究室の業績にもなる.特に優れた講演者は優秀発表賞として表彰されることもあり,これもまた研究室の業績になる.