学歴ロンダの手順

 

学歴ロンダをしたい人へ

 自分の研究スキルを高めるために,はたまた就活を有利に進めるために,今よりレベルの高い大学院へ進学する人は多い.いわゆる学歴ロンダと呼ばれる人たちである.大学院の進学は,基本的に同じ大学に進学するよりもはるかに簡単であることが多い.外部からの進学をめざす学生にとっては,とてもありがたい状況である.

 しかし院試の仕組みをよくわかっていと,この学歴ロンダはうまくいかない.院試勉強の時間を確保できなかったり,今いる大学の指導教官と進路について揉めたりするためである.ここでは,学歴ロンダにおける注意点と,その手順について個人的な考えをまとめておこうと思う.

1.進学したい大学院,研究科,研究室を選ぶ

 まず最初にしなければならないことは,当たり前のことだが,進学したい大学院・研究科と所属したい研究室を選ぶことである.「とにかく〇〇大学の大学院に進学したい!」みたいな,大学のネームバリューで選ぶのも一つの手ではある.しかし,それでもどの大学院を選べばいいか迷っているような人は,自分が関心のある研究テーマをいくつかピックアップして,大学名と一緒にネットで検索するといい.今時どこの大学院や研究室でも独自のホームページを持っているので,きっと自分がしたい研究をしている研究室を見つけることができるだろう.自分で調べる自信がない場合は,先輩や研究室のスタッフに,オススメの研究室について相談してもいい.

 気をつけなければならないのは,仮に希望の大学院・研究科に進学することができたとしても,希望する研究室に配属されるかどうかは分からないということである.人気のある研究室は,院試の成績順で配属者が決まる場合もあるため,第2,第3希望の研究室に配属されてしまうこともありうる.第3希望以内の研究室だったら,どこでもOKというような大学院・研究科を選ぶと失敗しない.

2.試験日程を確認し,進学までのスケジュールを立てる

 行きたい大学院や研究室が決まったら,次にすることは入学のスケージュール立案である.大学受験とは違って,大学院の院試は決まった時期に実施されるものではない.大学院によってお盆前だったり,正月明けだったりとまちまちである.学部4年生になる前に目星をつけていないと,受験できないような試験日程が組まれている大学院もあるかもしれない.「いつから本命の院試勉強を始めるか?」「もし院試に落ちた場合の滑り止めはどうするか?」ということを考えて,学部4年生のスケジュールを考えておくといい.できるだけ早い段階で,自分の進路の希望順を明確にしておく必要がある.

3.指導教官に対して外部進学の意思を伝える

 場合によっては,一番気を遣う必要があるのがこの指導教官への報告である.指導教官が,外部進学に肯定的な考え方をしてくれる人だったり,進路相談に親身になってくれる場合は,特に問題なく報告することができる.しかし,指導教官によっては,外部進学を「この研究室に何か不満があるのか?」と穿って捉えてくる人もいるだろう.確かに研究室運営の観点から見れば,研究を進めてくれる労働力たる学生の人数が減るのは,研究室にとってはマイナスである.

 指導教官の性格にもよるため,外部進学を切り出すタイミングは難しいところであるが,個人的にはなるべく早い段階で伝えた方が良いと思う.前もってそういう意思を持っている学生だということを分かってもらっていた方が,指導教官も柔軟な対応を取りやすい.外部進学した後も,同じ分野の研究を続ける場合は,学会などで顔をあわせることもあるだろうから,なるべく揉め事を起こさないように卒業できるのがベストだ.

4.進学先の院試説明会への参加

 大体の大学院では,大学院説明会というものが院試の2ヶ月前ぐらいに開催される.この説明会には可能な限り参加しておいた方がいい.院試に関わる情報だけでなく,研究室見学会が開催されることがあるからだ.実際の研究室の雰囲気や,研究スタッフに進学する意思を伝えることができる貴重なチャンスである.研究室のメンバーと顔見知りになっておけば,今後その研究室に配属されることになった時にも,どんな人たちがいるのだろうと不安に思わなくても済む.

 優しい研究室であれば,過去問や,出題傾向,勉強するといい教科書についても教えてくれることもある.外部進学者は内部進学者と違って,こと情報戦に関してはめっぽう不利なので,積極的にアドバイスをもらえるように聞いて周るといい.外部進学者に対して優しくしてくれるか心配する人が多いと思うが,大抵は思っている以上に親切である.(ただし,同じ試験を受ける同学年のライバルたちは,少しピリピリしているかもしれない.定員オーバーしているような外部からも人気のある研究室だったらなおさら.)

5.院試対策

 ここまでの準備が済めば,あとは試験に合格するだけである.大学院にもよるが定員割れしているような研究科なら,正直よっぽど酷くない限りまぁ合格するだろう.偏差値が10ぐらい離れている大学からでも合格する人もいる.(複数受験が可能な院試は,滑り止めで受ける人も少なくないので倍率が高くなることもあるが,気にしない,気にしない.)内部進学者は,問題を作成する教授陣の講義を受けているため,出題傾向を把握しやすいという点で有利である.ただそれでも試験というからには,そこまでひどい試験範囲が大きく偏ることはないだろうから,研究室見学会で入手した情報があれば十分に戦えるだろう.

最後に

 学歴ロンダは,事前準備をしっかりとしさえすれば,決して難しいことではない.むしろ,学歴ロンダにとって最も大変なのは進学後である.院試に合格したからといって,内部進学者と同等レベルの研究能力をもっているかといえば決してそんなことはない.おそらくまだまだレベルの隔たりはあるだろう.進学を決めた時のモチベーションを保って卒業まで研究を続けて欲しい.