博士を取得するメリット

 

博士を取得すると…

 大学に4年間,大学院で5年間かけてようやく博士を取得したとする.こんなにも苦労して博士を取得したからには,バラ色の人生が待っているのではないかと思う人も多いかもしれないが,実は決してそんなことはない.正直言って大学院を卒業して30歳手前になって社会人経験がゼロの人間を欲しがる会社はそんなには多くない.はっきり言ってしまうと,博士を取得することで得られるメリットというのはそんなに多くはないのだ.そんな数少ないメリットの中でもいくつかありそうなことを列挙したいと思う.

博士を名乗ることができる!

 正直これがいちばんのメリットではないだろうか.博士を取得すると,名刺や肩書きに「〇〇博士」と使うことができる.つまり「〇〇博士 山田 太郎」みたいに名乗ってもいいことになる.これは会社に勤めていようが,大学で働いていようが,もっと言えば仕事をしていなかろうが使うことが可能な肩書きである.(仕事してない人が博士を名乗る機会は少ないだろうが…)「博士なにそれ?」みたいな人に博士を名乗っても「ふーん」で終わってしまうが,同じ分野の研究者同士ならば.博士を名乗る誇らしさを感じることができると思う.

海外での肩書きが「Mr.」から「Dr.」になる!

 基本的に日本に比べて欧米の方が博士の認知度が高い.やはりそれは大学や博士の文化が欧米由来であることが大きな原因だとは思う.そのためか欧米では博士号取得者は,普段使用される敬称も通常の「Mr.(ミスター)」ではなく,「Dr.(ドクター)」で読んでもらえる.「Dr. Tarou Yamada」のように呼ばれ,日本よりも敬意を持って接してもらえることが多いような気がする.

一人前の研究者として認められる!

 博士という資格は,研究者としての能力を保証するものでもある.そのため博士号取得者は,一人前の研究者としてあらゆる研究の場面で頼りにされる機会が多い.専門的な知識は当然の事,研究のアプローチ法,論理力,課題解決力などを頼りにされることだろう.

 あと…他にも博士を取得するメリットは…………………正直思いつかなかった.デメリットの方がスラスラたくさん出てきそうである.低収入の問題,授業料の問題,社会保障の問題,就職先の問題,労働時間の問題,年齢の問題,教授などとの人間関係の問題,オーバードクターの問題……ほらね,こんなに出てくる.

博士を取得しても…

 博士を取得したからと言って大きなメリットがないことは上述の通りである.むしろどっちかと言えばデメリットの方が大きいとさえ思う.それでも僕は博士を取得したことには全く後悔していない.就職活動で失敗してニートになっていたら後悔していたかもしれないが,好きなことを勉強して研究して博士を取得できたことには満足している.

 博士というのは学位であり能力の証明書みたいなところがある.博士の学位を取ることが目的になってしまっていると,学位取得後にどうしたいかが分からなくなってしまう.博士の学位はあくまで研究者としてのスタートラインだ.博士の学位を目指すことで何ができるようになるのか,何をしたいのかを考えていないと研究のモチベーションを保てないだろうし,博士を取得する意味もないと思う.このブログを読んだ人は,博士学位を自分の人生にどう生かすかを考えて,博士取得を目指して欲しい.

(以上はあくまで一個人の見解です…)